部屋の鍵を預かったまま、何日も手をつけられずにいる。遺品整理は「やり方が分からない」以前に、始める気持ちが整わないことのほうが多い。結論から書くと、自分でやるか業者に頼むかは、物量・期限・距離・体力の四つで決まる。急ぐ理由がないなら急がなくてよいが、賃貸の明け渡しや相続放棄の検討がある場合だけは期限が先に立つ。ここでは順番と判断基準を整理する。
| 判断材料 | 自分でやりやすい | 業者を検討したい |
|---|---|---|
| 物量 | 1R〜1K程度、大型家具が少ない | 2DK以上、タンス・冷蔵庫が複数 |
| 期限 | 持ち家で急がない | 賃貸の明け渡し日が決まっている |
| 距離 | 車で通える範囲 | 遠方で何度も通えない |
| 体力・人数 | 複数人で作業日を取れる | 一人、または高齢・持病がある |
手を止めていい期間と、止められない期間
まず整理しておきたいのは、急がなくてよい場合と、そうでない場合の線引きだ。持ち家で誰も住まないだけなら、片付けの開始時期に法律上の期限はない。四十九日を過ぎてから、あるいは年が明けてからでも構わない。
一方で、相続放棄を検討しているなら話が別になる。民法921条1号は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認をしたものとみなすと定めている(保存行為等を除く)。放棄の可能性があるうちは、遺品に手をつける前に確認が必要になる。
賃貸物件の場合は、家賃が発生し続けるため明け渡しの期限が現実的な制約になる。ただし、相続放棄を検討している状況で急かされているなら、まず相談が先だ。
自分でやるときの順番
自分で進めるなら、次の順番が扱いやすい。物を「捨てる・残す」で分けようとすると手が止まるので、最初は分類そのものを目的にしない。
1. 貴重品と書類だけを先に探す。通帳、権利証、保険証券、印鑑、契約書、鍵。これらは部屋の状態にかかわらず最優先で、一つの箱にまとめる。2. 判断が要らない物から出す。明らかなごみ、期限切れの食品、汚れた消耗品。ここが減ると視界が変わる。3. 保留箱を作る。迷ったものは全部保留に入れる。決めないことを決めるだけで作業は進む。4. 大型家具・家電の処分方法を調べる。自治体の粗大ごみか、家電リサイクル法の対象か、買取に回せるか。5. 最後に保留箱を開ける。時間が空くと判断が変わることがある。
作業時間は物量次第だが、一日で終わらせようとしないほうがよい。区切りを決めて、そこで止める。
横浜市は遺品整理の案内で「遺品整理や片づけであっても、通常の家庭ごみと同じように、必ず分別してください。」と書いている。業者に任せた場合でも、家庭ごみとして出す部分のルールは変わらない。
業者に頼む場合の費用感
目安として、業者紹介サイトのみんなの遺品整理は「遺品整理の費用相場は1R・1Kで30,000円~80,000円程度となっていますが、荷物の量や周辺環境などによっても異なります。」としている。同サイトの間取り別の表では、2LDKで120,000〜300,000円、4LDK以上で220,000〜600,000円という幅が示されている(2026年3月21日更新時点)。
個別の業者の例では、遺品整理プログレスが1K 15,000円(税込)〜、2LDK 60,000円(税込)〜、4LDK 165,000円(税込)〜という基本料金の目安を掲載している(2026年7月時点)。同社は「ご遺品の量や現場状況により料金が多少異なる場合がございます。」と注記しており、正式な料金は現場確認後の見積書で提示するとしている。
幅が大きいのは、間取りが同じでも物量とアクセス条件で作業量が変わるためだ。エレベーターの有無、駐車位置から玄関までの距離、階段の幅。こうした条件は現場を見ないと分からない。
「終わらない」と感じるときに効くこと
遺品整理が進まない理由の多くは、物量ではなく決められないことにある。手が止まったら、次の三つを試したい。
ひとつは、写真を撮ってから手放すこと。現物がなくても記録は残る。もうひとつは、他人に一緒にいてもらうこと。作業を手伝ってもらわなくても、判断を口に出す相手がいると決まりやすい。三つ目は、期限を区切らないこと。皮肉に聞こえるが、「今日で終わらせる」と決めた日ほど動けなくなる。
何年かかっても構わない、という選択もある。持ち家で誰にも迷惑がかからない状況なら、急ぐ理由は本当はどこにもない。
自分でやる場合と業者の組み合わせ
全部か無かではない。仕分けは自分で行い、搬出だけを業者に頼む形は現実的だ。逆に、大量の物を先に業者に出してもらってから、残った書類や写真を自分で見る順番もある。
業者を使う場合、不用品の運搬には市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が関わる。国民生活センターは「インターネットやチラシ等で広告を大々的に出している事業者が必ずしも一般廃棄物処理業の許可業者とは限りません。」と注意喚起している。会社の規模や広告の量ではなく、許可の有無で見たい。
よくある質問
遺品整理は自分でやると何日くらいかかりますか?
物量と人数で大きく変わるため、一律には言えない。参考として、みんなの遺品整理が示す業者作業の目安では1R・1Kが1〜2名で1〜2時間、2LDKが3〜6名で3〜8時間となっている。個人が一人で、判断しながら進める場合はこの何倍もの時間がかかると考えたほうがよい。週末ごとに数時間ずつ、というペースで数か月かかることも珍しくない。
遺品整理は誰がやらなければいけないのですか?
法律上「誰がやる」と決まっているわけではないが、遺品は相続財産に含まれるため、実際には相続人が関わることになる。みんなの遺品整理は費用の負担について「基本的に、遺品整理の費用は法定相続人が支払います。」と説明している。誰が手を動かすかと、誰が費用を負担するかは分けて考えたい。
途中でやめて再開しても問題ありませんか?
持ち家で急ぐ事情がなければ問題ない。ただし相続放棄を検討している場合と、賃貸で明け渡し期限がある場合は別で、前者は着手前に専門家へ、後者は管理会社との調整が先になる。中断すること自体を責める必要はない。

まとめ
遺品整理を自分でやるか業者に頼むかは、物量・期限・距離・体力で決まる。急ぐ必要があるのは、賃貸の明け渡しが迫っている場合と、相続放棄を検討している場合。それ以外は、進まない時期があっても構わない。
自分で進めるなら、貴重品と書類を先に確保し、判断が要らない物から出し、迷ったものは保留箱に入れる。業者に頼む場合は、1R・1Kで30,000〜80,000円程度という目安があるが、現場条件で変わるため見積もりが前提になる。仕分けは自分、搬出は業者という分担も選べる。












