処分費用がかさむなら、売れるものは売って充てたい。そう考えるのは自然だが、遺品の買取には相続と税金の話が絡む。結論から書くと、売る前に確認すべきは「相続放棄を検討していないか」と「他の相続人の合意があるか」の二つ。この二つが済んでいれば、あとは出張・宅配・持ち込みのどれを使うかという実務の話になる。ここでは判断の順番を整理する。
| 売り方 | 向いている物 | 手間 |
|---|---|---|
| 出張買取 | 大型家具・家電、量が多い場合 | 立ち会いが必要 |
| 宅配買取 | 本・CD・小物・カメラ | 梱包と発送 |
| 店頭持ち込み | 点数が少なく運べる物 | 運搬が必要 |
| フリマ・オークション | 趣味性の高い物 | 出品・発送・対応 |
売る前に確認する二つのこと
ひとつめは相続放棄の検討有無だ。民法921条1号は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認をしたものとみなすと定めている(保存行為等を除く)。遺品を売却する行為は、この「処分」と評価される可能性がある。借金の有無がはっきりしないうちは、売らずに止めておきたい。
ふたつめは他の相続人との合意だ。遺品は相続財産に含まれるため、遺産分割が済んでいない段階で一人が勝手に売ると、あとから金額をめぐる話になりやすい。査定書や買取明細を残しておくと説明しやすい。
売れる可能性がある物
買取業者が扱う品目は幅広い。出張買取のバイセルは、着物、切手、古銭、骨董品、レコード、カメラ、ブランド品、宝石、時計、毛皮、金、食器、お酒、金券、ゴルフ、楽器、家電、オーディオ、アパレル(洋服)、iPhoneを買取アイテムとして掲げている(2026年7月時点)。同社は出張買取について「査定料、送料、出張料などの手数料がすべて無料」としている。
宅配買取の買取王子は「買取王子の取り扱う商品は60種類以上!」としており、ブランド品、家電、カメラ、スマホ・携帯、パソコン、楽器、本、CD・レコード、DVD、ゲーム、時計、お酒、キャンプ用品、電動工具、トレーディングカードなどを挙げている。ただし品目は入れ替わることがあり、同ページでもファッションは取扱い終了と表示されている。送る前に対象品目を確認したい。
冷蔵庫やソファのような大型家具・家電は、出張買取に対応するリユースショップが窓口になる。ただし対応品目、持ち出せる寸法の上限、対応エリアは店舗ごとに違うため、申し込み前に自分の地域と品目が対象かを確認する必要がある。
逆に、値がつきにくいのは、量産品の食器、来客用の寝具、古い家電、たんすなどの大型家具だ。着物も、状態や素材によっては値がつかないことがある。買取ありきで処分計画を立てると、当てが外れやすい。
出張買取を頼むときの注意
訪問して物品を買い取る取引は、特定商取引法の「訪問購入」に当たる場合がある。消費者庁は不招請勧誘の禁止について「事業者は、訪問購入に係る売買契約の締結についての勧誘の要請をしていない者に対し、相手方の自宅等で売買契約の締結について勧誘をし、又は勧誘を受ける意思の有無を確認してはいけません。」と説明し、「いわゆる飛込み勧誘や、単に相手方から査定の依頼があった場合に、査定を超えて勧誘を行うことは、法に抵触することになります。」としている。
売ったあとでも取り消せる余地がある。同庁は「法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、相手方は事業者に対して、書面又は電磁的記録により申込みの撤回や契約の解除(クーリング・オフ)をできます。」と案内している。さらに「売買契約の相手方は、クーリング・オフ期間内は債務不履行に陥ることなく、事業者に対して契約対象である物品の引渡しを拒むことができます。」ともされている。迷ったら、その場で渡さないという選択ができる。
横浜市は遺品整理の案内で「なお、家財などの買取を行う場合は古物商の許可が必要です。許可の有無については、業者にお尋ねください。」と書いている。買い取るための古物商許可と、不用品を運ぶための一般廃棄物収集運搬業の許可は別物になる。
買取と税金の関係
遺品を売って現金化した場合、税金はどうなるのか。国税庁は課税されない譲渡所得として生活用動産の譲渡を挙げ、「家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得です。」と説明している。
ただし例外がある。同ページは「ただし、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は除きます。」としている。高額な貴金属や骨とう品を売った場合は、生活用動産の非課税の範囲から外れることになる。
相続税の課税対象になるかどうかは、また別の話だ。国税庁は、取得した財産の価額の合計額が遺産に係る基礎控除額の範囲内であれば申告も納税も必要ないとしている。判断がつかない場合は税務署や税理士に確認したい。
フリマアプリを使う場合
メルカリやヤフオクのようなサービスは、業者査定より高く売れることがある一方、出品・梱包・発送・購入者対応の手間がかかる。遺品整理は点数が多いため、全部を出品するのは現実的でないことが多い。趣味性の高い物だけを個別に出す、という使い分けが向いている。
税金の考え方は買取と同じで、生活用動産に当たるかどうかが分かれ目になる。継続的・反復的に販売して事業と評価される規模になると扱いが変わるため、量が多い場合は税務署に確認したほうが確実だ。
売らずに手放す方法
値がつかない物でも、行き先はある。自治体のリユース事業、地域の福祉団体への寄付、リサイクルショップの無料引き取り。品目や状態の条件があるため、事前に問い合わせが必要になる。
買取と処分を同じ業者にまとめると、買取額が処分費用から差し引かれる形で提示されることがある。この場合、買取額と処分費が分けて書かれているかを確認したい。合算だけの提示だと、どちらが妥当か判断できない。
よくある質問
遺品整理で出た物は売っても問題ありませんか?
相続放棄を検討していない、かつ他の相続人の合意がある場合は問題ない。相続放棄の可能性があるなら、売却が法定単純承認と評価されるおそれがあるため、弁護士・司法書士に確認してから動きたい。遺産分割が済んでいない段階で一人が売ると、金額をめぐる行き違いが起きやすい点にも注意したい。
遺品を売ったお金に税金はかかりますか?
国税庁は、家具・じゅう器・通勤用の自動車・衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得は課税されないとしている。ただし貴金属や宝石、書画、骨とうなどで1個または1組の価額が30万円を超えるものは除かれる。相続税の要否は別の判断になるため、金額が大きい場合は税務署や税理士に確認してほしい。
着物や古銭はどこで売ればよいですか?
着物・切手・古銭・骨董品を買取アイテムとして掲げている出張買取業者がある。バイセルはこの4品目を含む買取アイテムを公開しており、出張買取については契約日を含め8日間以内の申し出に関して返品保証を実施していると案内している。ただし査定額は状態と需要で決まるため、複数社に見てもらったほうが判断材料が増える。値がつかない場合の引き取りの可否も、事前に聞いておきたい。

まとめ
遺品の買取で先に確認するのは、相続放棄を検討していないか、他の相続人の合意があるか、の二つ。この二つが済めば、出張・宅配・店頭・フリマから物に合った方法を選ぶことになる。
出張買取は特定商取引法の訪問購入に当たる場合があり、不招請勧誘は禁止されている。書面受領日から8日以内はクーリング・オフができ、その期間内は物品の引渡しを拒める。税金については、生活に通常必要な動産の譲渡は課税されないが、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・宝石・書画・骨とうは除かれる。












