出産準備の費用は、病院に払う出産費用と、ベビーベッドや肌着などのベビー用品の二つに分かれます。調べてみると、この二つは性質がまったく違いました。出産費用には国の統計があり、出産育児一時金(50万円)という戻るお金もあります。一方でベビー用品の準備費用には公的な相場が見当たらず、何をそろえるかで大きく変わります。まず出産費用の平均と一時金との差を下の表にまとめました。
出産にかかるお金と戻るお金の早見表(いずれも正常分娩のみのデータ)
| 項目 | 令和5年度 | 令和6年度上半期 |
|---|---|---|
| 平均出産費用(室料差額などを除く) | 506,540円 | 517,952円 |
| 妊婦が払った総額(室料差額などを含む) | 574,583円 | 589,794円 |
| 出産育児一時金(戻るお金) | 500,000円 | 500,000円 |
| 総額から一時金を引いた自己負担の目安 | 74,583円 | 89,794円 |
| 都道府県差(平均出産費用・令和6年度) | 最も高い東京都648,309円/最も低い熊本県404,411円 | |
出典:厚生労働省「出産費用の状況等について」(令和6年11月)・厚生労働省 医療保険部会資料(令和7年10月)・協会けんぽ よくある質問(2026年9月時点)
平均で見ると、室料差額などを含めた総額では一時金から7万〜9万円ほど足が出る位置関係です。帝王切開などは含まない数字です。
出産費用の平均と一時金50万円の差
平均は正常分娩だけの数字。帝王切開は別枠
表の平均出産費用は、健康保険が使われない正常分娩のデータです。厚生労働省の資料では、令和6年度の請求のうち正常分娩が約53%、帝王切開などの異常分娩が約47%でした。平均額は出産全体の半分ほどしか映していないので、自分の出産がそのとおりになるとは限りません。
出典:厚生労働省「医療保険制度における出産に対する支援の強化について」(2026年9月時点)
帝王切開の場合は扱いが変わります。協会けんぽの出産育児一時金のページによると、「帝王切開等による分娩の場合は、健康保険が適用されますので、医療費(保険診療分)が高額となる場合は高額療養費の対象となります。」とあります。自己負担の上限は所得区分と分娩した月で変わります。
窓口で払うのは一時金を超えた分だけ
50万円を先に全額立て替える必要は、多くの場合ありません。協会けんぽのよくある質問によると、「出産育児一時金の支給が協会けんぽから直接医療機関等へ支払われることから、医療機関等の窓口で高額な出産にかかった費用を支払う必要がありません。」とあります。これが直接支払制度です。直接支払制度を使えば、退院時に払うのは一時金を超えた差額だけになります。使えるかは病院ごとに違うので、分娩予約のときに確かめてください。
逆に費用が50万円に届かなかった場合は、協会けんぽは差額を被保険者等に支給するとしています。平均出産費用が熊本県の404,411円なら、404,411円と500,000円の差は95,589円です。ただし平均出産費用は室料差額・産科医療補償制度の掛金などを除いた額なので、実際に戻る額はこれより少なくなります。
出典:協会けんぽ 出産育児一時金について(2026年9月時点)
住んでいる県で24万円ほど差がある
厚生労働省の医療保険部会資料によると、「最も平均出産費用が高いのは東京都で648,309円、最も低いのは熊本県で404,411円であった。」とあります。差は243,898円です。東京都の平均なら一時金を148,309円上回ります。全国平均より、住んでいる地域と選ぶ病院の料金表のほうが自己負担を大きく左右します。

出産の標準的な費用の給付を見直す法律は2026年6月5日に公布されました。ただし新しい仕組みの開始日は公布後2年以内に政令で決めることになっていて、2026年9月時点では決まっていません。全ての妊婦への定額の現金給付も、金額は政令で決める扱いです。今の出産は、これまでどおり出産育児一時金(50万円)の制度で考えます。
出典:厚生労働省「健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)の概要」(2026年9月時点)
一時金のほかに、妊娠中と出産前後に自治体から出る「妊婦のための支援給付」(1人の出産なら合計10万円)もあります。現金かクーポンかは自治体によって違います。もらえるお金の全体像は、立場別に下の記事でまとめています。
出典:横浜市 妊婦のための支援給付(2026年9月時点)
ベビー用品の準備費用に公的な相場はない
「出産準備品の総額」の公的統計は見当たらない
ベビー用品の準備にいくらかかるかも調べましたが、厚生労働省・こども家庭庁・内閣府の資料や政府統計の窓口を探しても、出産準備品に絞った統計は見つかりませんでした。ネットで見かける「出産準備は◯万円」は、民間調査か個人の実例で、公的な相場ではありません。何を買うか、譲ってもらえるかで振れ幅が大きいので、一つの数字に合わせなくて大丈夫です。
参考になるのは「0歳の1年間」の調査
近い数字として、国立成育医療研究センターの研究グループが2024年11月に行ったウェブ調査があります。第一子が0歳の母親154人の回答で、0歳の1年間にかかった衣類・服飾雑貨費が平均140,616円、生活用品費が平均223,810円でした。これは生まれる前の準備費用ではなく、0歳の1年間に使った合計です。おむつなど毎月買い足すものも入っているので、出産前にこの額を用意しておく必要がある、という意味ではありません。
出典:日本公衆衛生雑誌 第73巻第2号 子育てに要する費用の調査(ウェブアンケート調査2024)表3(2026年9月時点)
最低限は「退院の日から使うもの」に絞る
最低限そろえるものは、金額より使い始める日で考えると整理しやすいです。出産前に用意するのは退院の日から毎日使うものだけで、あとは生まれてから足せば間に合います。
・退院の日から使うもの:肌着などの衣類、おむつ、沐浴用品、寝る場所。車で退院するならチャイルドシート
・生まれてから様子を見て足すもの:消耗品の買い足し、ハイローチェアやバウンサーのように合う合わないが分かれる道具
・使う期間が短い大物:ベビーベッドなど。手持ちや譲り受け、レンタルで済む場合がある
大物は買うか借りるか使う期間で決める
手持ちやお下がりで足りるなら、買わず借りずでいい
大物で迷ったら、最初に確かめるのは身近で譲ってもらえるものがあるかどうかです。手持ちや譲り受けで足りるなら、新しく買う必要も借りる必要もありません。自分は一人暮らしを14年続けて、使う頻度の低いものを買って後悔したことが何度もあります。ベビー用品の経験はありませんが、使う期間が決まっている物ほど「まず手元にあるか」を見る順番は同じだと思います。
ベビーベッドは借りる選択肢がある
手元にない場合、ベビーベッドのように使う期間が限られる大物は、レンタルという選択肢があります。借りる場合は、同じ商品でも期間によって料金が変わるので、使う期間を先に決めてから比べます。あくまで1社の一例ですが、ベビー用品レンタルのベビレンタで、アップリカのミニベビーベッド「ココネル エアー AB」(中古)は3日間5,280円、30日間6,600円でした。往復送料は別で、住所を入れたカート画面で表示される仕組みです。
出典:ベビレンタ公式サイトの商品ページ(2026年9月30日時点・税込)
一覧ページのもっと安い表示は新品の3日間の価格で、条件が違います。料金は会社や商品、期間でかなり変わるので、1社の数字だけで決めずに、期間と新品・中古をそろえて複数社を比べてください。各社のベビーベッドのレンタル料金は、下の「値段」の記事で並べて比べています。いつまで使うかの目安も別記事にまとめました。
ベビーベッド以外の大型品も含めて、買った場合と借りた場合の総額を比べたい場合は、こちらで品目ごとに計算しています。
チャイルドシートは車に乗る期間次第
チャイルドシートは、車で退院するなら出産前に用意が必要なものです。毎日のように車に乗るなら買う、里帰り中や帰省のときだけ乗るなら借りる、と車に乗る期間で分けるのが考えやすいです。店舗で借りられる場所と料金は下の記事で整理しています。

戻るお金の受け取り先を知っておく
一時金は被保険者や世帯主に支払われる
出産準備の費用を誰が出すかを考える前に、戻るお金がどこに入るかを知っておくと話が早くなります。一時金の受け取り先は加入している健康保険で決まり、出産した本人とは限りません。一時金は、会社員本人の出産なら本人の健康保険から、夫の扶養に入っている妻の出産なら夫の健康保険から家族出産育児一時金として出ます。国民健康保険の場合は、渋谷区の国民健康保険のページによると、「国民健康保険加入者が出産したとき、世帯主に出産育児一時金が支給されます。」とあります。
差額が戻る先が本人でない場合もあるので、一時金も含めて出産費用とベビー用品の費用をどう出すかを、早めに夫婦で話しておくと後でもめにくいと思います。
医療費控除に身の回り品や里帰りの交通費は入らない
出産でかかったお金は医療費控除の対象になるものがありますが、準備品はほぼ対象外です。国税庁のタックスアンサーによると、「(3)入院に際し、寝巻きや洗面具など身の回り品を購入した費用は医療費控除の対象になりません。」とあります。里帰り出産についても、同じページによると、「(注)実家で出産するために実家に帰省する交通費は医療費控除の対象にはなりません。」とあります。ベビー用品や入院準備の買い物は、医療費控除を当てにせずに予算を組むのが安全です。
妊婦健診や入院費を医療費控除に入れるときは、受け取った出産育児一時金を医療費から差し引いて計算します。控除されるのは、差し引いた後の医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満なら、その5%)を超えた部分です。
出典:国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき・国税庁 No.1124(令和8年4月1日現在法令等)
よくある質問
出産費用は一時金の50万円で足りますか?
正常分娩の平均出産費用(令和6年度上半期517,952円)で見るとほぼ同じ水準ですが、室料差額などを含めた総額の平均は589,794円で、一時金を上回っています。地域差も大きく、令和6年度は東京都の平均出産費用が648,309円でした。分娩予定の病院の料金表で確かめるのが確実です。
ベビー用品の準備にはいくら用意すればいいですか?
出産準備品に絞った公的な統計は見つかりませんでした。国立成育医療研究センターの調査に0歳の1年間の衣類・生活用品の費用はありますが、準備費用とは別物です。退院の日から使うものを先にそろえ、あとは生まれてから足す考え方にすると、最初に用意する額を抑えられます。
ベビーベッドは買うのと借りるのとどちらがいいですか?
使う期間と、譲ってもらえるものがあるかで変わります。手持ちやお下がりがあれば買う必要も借りる必要もありません。短い期間だけ使うならレンタルという選択肢があり、たとえばベビレンタのミニベビーベッド(中古)は30日間6,600円(送料別・2026年9月30日時点)でした。
まとめ
出産準備の費用は、出産費用とベビー用品で分けて考えると見通しが立ちます。出産費用は正常分娩の平均で令和5年度が約50.7万円、令和6年度上半期が約51.8万円、一時金は50万円で、直接支払制度を使えば窓口で払うのは差額だけです。まず分娩予定の病院の料金表を確かめ、ベビー用品は退院の日から使うものだけを先にそろえる。大物は手持ちや譲り受けを確かめてから、使う期間が短いものだけ借りるかどうかを考えれば十分です。













