片付けを始めると、判断できない物ばかりが手元に残る。どれが大事なのか分からないまま袋に入れてしまうのが一番こわい。結論から書くと、先に確保すべきは「お金と契約に関する紙」「本人確認に使う物」「デジタル機器」の三つ。この三つを箱に分けてしまえば、残りは急いで判断しなくてよくなる。ここではリストと、その理由を整理する。
| 分類 | 具体例 | 残す理由 |
|---|---|---|
| お金・契約 | 通帳、キャッシュカード、保険証券、権利証、契約書、株券、金庫の鍵 | 相続財産・債務の把握に必要 |
| 本人確認 | 印鑑、印鑑登録証、マイナンバーカード、年金手帳 | 各種手続に使う |
| デジタル | スマホ、パソコン、外付けHDD、SDカード、手書きのパスワードメモ | 口座・契約・写真の手がかり |
| 判断を保留 | 手紙、日記、写真、貴金属、着物 | 戻せない。後で決めればよい |
お金と契約に関する紙を最優先で探す
通帳、キャッシュカード、保険証券、不動産の権利証、借入の契約書、証券会社からの通知。これらは相続財産と債務の全体像をつかむための材料になる。特に借入に関する書類は、相続放棄を検討するかどうかの判断に直結する。
民法915条2項は、相続人は相続の承認または放棄をする前に相続財産の調査をすることができると定めている。調べる行為自体は認められている。一方で民法921条1号は、相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認をしたものとみなすとしている(保存行為等を除く)。書類を探すことと、物を処分することは分けて考えたい。
現金が出てきた場合も相続財産に含まれる。自分だけで処理せず、他の相続人に共有しておくのが後の揉め事を防ぐ。金額と発見場所をメモし、写真を撮っておくとよい。
保険は「あるかどうか」から調べられる
証券が見つからなくても、生命保険の契約を調べる手段はある。一般社団法人生命保険協会は、生命保険契約照会制度を用意している。死亡した契約者・被保険者について、協会の会員会社に生命保険契約の有無を照会できる仕組みだ。
ただし2026年7月時点で、同協会は「現在、生命保険契約照会制度に使用しているシステムに不備が見つかりましたため、安全性の確認が完了するまでの間、システムを停止しております。」と告知しており、書面による申請は引き続き利用可能としている。利用条件や手数料は協会のページで最新の案内を確認してほしい。
スマホとパソコンは捨てない
デジタル機器は、口座やサブスクリプション契約、写真の所在をたどる手がかりになる。ロックが解除できなくても、すぐに処分しないほうがよい。契約している携帯電話会社の窓口で、解約や名義変更の手続とあわせて相談できる。
処分すると決めた場合も、データの扱いを先に決めてから出したい。パソコンやスマートフォンは小型家電リサイクルの回収対象になっている自治体が多いが、データ消去の責任は基本的に出す側にある。
貴重品の探索を基本サービスに含める会社もあるが、探し漏れがないとは限らない。通帳・印鑑・現金・貴金属・権利証は、作業日の前に自分で探して別の場所に移しておきたい。事前に全部を探せない場合は、貴重品が出たときの連絡方法を契約時に決めておく。
すぐ捨てなくていいもの
手紙、日記、写真、故人の衣類。これらは相続手続に必要な物ではないが、捨ててしまうと戻せない。判断がつかないうちは保留の箱に入れておけばよい。時間が経ってから見ると気持ちが変わることがある。
日記や手紙は「読んでいいのか」で手が止まることもある。読まずに保管したままでも構わない。急いで結論を出さないといけない物ではない。
遺骨や位牌は、通常の家庭ごみとして出せる物ではない。菩提寺や霊園、供養に対応する事業者に相談することになる。
個人情報が載っている紙の処分
捨てると決めた書類にも、口座番号や住所、健康に関する記録が載っていることがある。そのまま資源ごみに出すのは避けたい。シュレッダーにかけるか、油性ペンで塗りつぶすか、溶解処理に対応するサービスを使う。
量が多い場合、書類の溶解処理を有料で行う事業者もある。遺品整理業者に頼む場合は、書類の処分方法を確認しておくと安心できる。
捨てる前に一度立ち止まる物
次のものは、扱いが決まっている、または価値の判断が難しいため、捨てる前に確認したい。
刀剣類は銃砲刀剣類所持等取締法23条により、発見した者が速やかに最寄りの警察署へ届け出ることになっている。消火器やスプレー缶は自治体のごみとして出せないことが多い。貴金属・骨とう・着物は、素人目には価値が分かりにくい。仏壇・神棚は寺社や専門の事業者が窓口になる。
よくある質問
遺品整理で残すものと捨てるものはどう判断すればいいですか?
最初から二択にしないほうがよい。まず「お金と契約に関する紙」「本人確認に使う物」「デジタル機器」を確保し、次に明らかなごみを出す。残りは保留の箱に入れて、あとで見直す。判断の対象を減らすことが、作業を進める一番の近道になる。
通帳や現金が出てきたらどうすればよいですか?
相続財産に含まれるため、自分だけで処分・使用せず、他の相続人と共有したい。金額と発見場所をメモし、写真を残しておくと説明しやすい。相続放棄を検討している場合は、見つけた現金を使うことが法定単純承認と評価されるおそれがあるため、手をつける前に弁護士・司法書士へ相談してほしい。
ロックが解除できないスマホはどうすればよいですか?
すぐに処分せず、契約している携帯電話会社の窓口に相談したい。解約や名義変更の手続とあわせて案内を受けられる。契約状況やサブスクリプションの解約に必要な情報が端末側にしかない場合もあるため、手続が済むまで保管しておくのが無難だ。

まとめ
遺品整理で先に確保したいのは、お金と契約に関する紙、本人確認に使う物、デジタル機器の三つ。通帳・保険証券・権利証・契約書は相続財産と債務の把握に直結し、印鑑やマイナンバーカードは手続に使う。スマホとパソコンは口座や契約の手がかりになるため、ロックが解除できなくても保管しておきたい。
手紙・日記・写真・貴金属は保留の箱へ。刀剣類は警察署へ届け出る、遺骨や位牌は寺社や専門の事業者に相談する、といった扱いが決まっているものもある。書類を捨てるときは、個人情報の消去まで含めて段取りを決めておきたい。













