喪主を務めることになったけれど、葬儀に参列した経験もほとんどなく、何から手を付ければいいのか分からない。そんな質問が知恵袋にはいくつも並んでいます。自分も喪主の経験はないので、法律と自治体の案内を中心に調べて整理しました。先に全体像を言うと、法律で決まりがあるのは死亡届の期限(7日以内)や火葬までの最短の時間(死亡後24時間経過後)など一部だけで、通夜・告別式の日程や挨拶は葬儀社と相談して決める部分です。
亡くなってから葬儀後までの流れ
喪主がやることを時系列に並べると、次のようになります。根拠が法律の行は期限を守る必要があり、慣習の行は家族と葬儀社で決めてよい部分です。
| 段階 | 喪主がやること | 期限・決まり | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 亡くなった直後 | 死亡診断書(死体検案書)を受け取る。近い親族に連絡する | — | — |
| 葬儀社への連絡・安置 | 葬儀社を決め、搬送と安置先を頼む | 決まりなし | 慣習 |
| 死亡届・火葬許可 | 死亡届を出し、火葬許可証を受け取る | 死亡の事実を知った日から7日以内(国外は3か月以内) | 法律(戸籍法第86条) |
| 通夜 | 弔問を受け、挨拶をする | 日程は火葬場の空きと相談 | 慣習 |
| 告別式・火葬 | 挨拶をする。火葬許可証を火葬場に出す | 火葬は死亡後24時間を経過してから | 法律(墓地、埋葬等に関する法律第3条) |
| 葬儀後の手続き | 世帯主の変更(世帯に2人以上残る場合) | 変更があった日から14日以内 | 法律(住民基本台帳法第25条) |
| 葬儀後の手続き | 年金受給者だった場合の死亡届 | マイナンバー収録済みなら原則不要。必要な場合は10日以内(国民年金は14日以内) | 日本年金機構の案内 |
| 葬儀後の手続き | 葬祭費(国民健康保険など)・埋葬料(協会けんぽ)の申請 | 2年で時効(起算日は制度ごとに違う) | 各保険の案内 |
出典:戸籍法・墓地、埋葬等に関する法律・住民基本台帳法(e-Gov法令検索)、日本年金機構、協会けんぽ(2026年9月時点)
こうして並べると、亡くなってから数日のうちに期限が迫るのは死亡届だけです。それ以外の「急ぎ」は、法律ではなく火葬場や式場の予約の都合から生まれています。

死亡届と火葬許可証の手順
死亡届は7日以内。診断書と一体の用紙
死亡届の期限は戸籍法第86条で、死亡の事実を知った日から7日以内と決まっています。死亡届は病院で受け取る死亡診断書と同じ1枚の用紙になっているのが通常で、医師が書いた診断書の部分と一緒に提出します。東京都中央区の案内によると、「通常、死亡診断書(死体検案書)は死亡届と一体となって印刷されており、医師等が記載し、病院等から発行されます。」とあります。
7日目が土日や祝日に当たったときの扱いは、自治体の案内を確認します。同じ中央区の案内には、「7日目が区役所の閉庁日(土日・祝日・年末年始)にあたる場合は、翌開庁日までにお届けください。」とあります。これは中央区の案内なので、実際に届け出る市区町村のページでも同じ扱いかを見ておくと確実です。
死亡診断書は出す前にコピーを取る
死亡診断書は提出すると返却されないので、窓口に出す前にコピーを取っておきます。静岡市も死亡届の案内で、「死亡診断書(死体検案書)は提出後返却されません。写しなどが必要な場合は事前にコピーをお取りください。」としています。届書の欄は届出人が書き、診断書の欄は医師が書く分担で、届出人が診断書の欄に書き込むことはありません。
届け先は、亡くなった人の本籍地、亡くなった場所、届出人の所在地のいずれかの市区町村です(戸籍法第25条・第88条)。窓口への提出は葬儀社が代わりに行う場合があり、静岡市の案内には「葬祭業者等に葬儀をお願いしている場合には、葬祭業者が届書提出の代行をします」とあります。引き受けるかどうかは、依頼する葬儀社に確認してください。
火葬許可証は納骨まで保管する
死亡届を出すと、火葬の許可証が交付されます。福岡市の案内では、「死亡届が出されると、火葬・埋葬の許可証を交付します。」とされています。火葬許可証は火葬のあとも手元に戻り、納骨のときにもう一度必要になる書類です。横浜市営斎場の案内には、「なお、火葬許可証については、火葬後、裏面に火葬証明を記載してお返しいたします(収骨終了後、骨壺をお返しする際に一緒にお返しいたします)。」とあります。墓地、埋葬等に関する法律第14条で、墓地や納骨堂は許可証を受け取ってからでないと遺骨を納められないことになっています。
・死亡診断書:提出すると返ってきません。保険や手続きで写しが要る場合に備えて、出す前にコピーを取っておきます
・火葬許可証:火葬後に火葬証明が書かれて戻ります。納骨のときに必要なので、骨壺と一緒に保管しておきます
喪主が決めることと任せられること
決めるのは葬儀社・形式・日程・呼ぶ範囲
喪主が自分で決める必要があるのは、どの葬儀社に頼むか、どの形式にするか、いつ行うか、誰を呼ぶかの4つです。搬送や安置、式場や祭壇の手配、当日の進行は葬儀社のプランに含まれる部分なので、何が含まれて何が別料金かを見積書で確かめるのが喪主の仕事になります。
葬儀の料金トラブルについて注意を呼びかけている国民生活センターの発表には、「葬儀社との打ち合わせは親族や第三者など複数で行いましょう。」「見積書は必ず受領し、内容(明細)をよく確認しましょう。」とあります。家族の誰かに同席してもらうだけでも、見落としは減らせます。
日程は火葬場の空き次第。最短でも24時間後
通夜と告別式の日程は法律では決まっていません。決まっているのは火葬のタイミングだけで、横浜市営斎場の案内にも「火葬は死亡後24時間以上経過しなければ、行うことができません(墓地、埋葬等に関する法律第3条)。」とあります。実際の日程は、火葬場と式場の空きから逆算して葬儀社と決めることになります。
地域や季節によっては、火葬まで日が空くこともあります。鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査」(2024年)によると、「さらに、関東地方の冬季(12月・1月・2月)に葬儀を実施した方の回答では、特に亡くなってから8日以上と回答した方が18.1%と多くおり、ご逝去から火葬までに日数を要する「火葬待ち」の傾向が見られました。」とあります。日が空くと安置の日数が延びるので、その分の費用も見積もりで確認しておきます。
お布施や作法は寺と葬儀社に確認する
喪主経験者が実際に困ったことの上位には、作法やマナーに関するものが並んでいます。鎌倉新書「第7回お葬式に関する全国調査」によると、「葬儀を行った際に困ったことについて伺ったところ、最も多く挙げられたのは「お布施の相場・マナーがわからない」で346件でした。」とあります。お布施や読経の段取りは宗派と地域で違うので、ネットの一般論より、お寺と葬儀社に直接聞くほうが確実です。菩提寺がある場合は、日程を決める前に連絡しておくと、住職の都合と火葬場の空きを一緒に調整できます。

家族葬で先に決めておくこと
呼ぶ範囲を最初に線引きする
家族葬は、いまや選ばれる形式のなかでいちばん多くなっています。同じ第7回調査では、「実際に行った葬儀の種類について最も多かったのは「家族葬」で47.0%(940人)でした。」とされています。一方で、困ったことの中には「訃報連絡をする相手・範囲がわからない(219件)」という回答も入っていました。
家族葬でいちばん先に決めるべきなのは、どこまでの親族・知人を呼ぶかの線です。形式としては、参列者を絞る家族葬のほかに、通夜を行わず告別式だけで済ませる一日葬という形式もあります。どちらにするかも、呼ぶ範囲と合わせて家族で決めておきます。
訃報の伝え方は家族で揃える
呼ばない人への連絡では、香典や供花を受けるかどうかを家族で先に揃えておきます。決めないまま連絡すると、伝える人によって言うことが変わってしまいます。どう伝えるのが礼儀にかなうかは地域や親族の考え方で違うので、年長の親族や葬儀社に相談しながら決めてください。
・呼ぶ範囲(親族のどこまで、知人を呼ぶか)
・呼ばない人への伝え方(香典・供花・後日の弔問をどうするか)
・形式(通夜も行う家族葬か、通夜を行わない一日葬か)
この3つが家族の中で揃っていれば、葬儀社との打ち合わせもスムーズに進みます。
通夜と告別式の当日
挨拶の場面と文例は葬儀社に確認する
知恵袋では、通夜の挨拶は参列へのお礼と告別式の案内くらいの簡単なものでいいのか、という質問も見かけます。言い回しや挨拶をする場面は宗派や地域、葬儀社の進行で違うので、一般論の文例をそのまま覚えるより、担当の葬儀社に聞くのが確実です。喪主が話す場面と文例があるかは、打ち合わせのときに葬儀社へ聞いておきます。
喪服は手持ちを前の晩に試着しておく
服装は、喪主として参列者の前に立つ立場なので、どの格の喪服を選ぶかも気になるところです。手持ちの喪服があるなら、当日の朝ではなく前の晩に一度着て、サイズを確かめておきます。自分も社会人1年目に買った喪服を持っていますが、体型が変わって今も着られるかは分かりません。喪主にふさわしい格や、手持ちがないときに借りる方法は、喪主の喪服の記事でまとめています。
葬儀後の手続きと期限
世帯主の変更は14日以内。1人になるなら不要
亡くなった人が世帯主で、世帯に2人以上が残るときは新しい世帯主を届け出ます。相模原市の案内では、「世帯員が2人以上残っている場合、新たに世帯主を決めていただくことが必要です。変更があった日から14日以内に、窓口で手続してください。」とされています。残る家族が1人だけなら、その人が自動的に世帯主になるので届け出は要りません。新潟市の案内にも、「世帯主が亡くなられたことで、世帯員が一人になった場合は、その方が新しい世帯主になりますので、手続きは必要ありません。」とあります。
年金の届けはマイナンバー登録済みなら原則不要
年金を受け取っていた人が亡くなったときの届けは、以前より簡単になっています。日本年金機構のよくある質問によると、「年金受給権者の死亡届は日本年金機構にマイナンバーが収録されている方につきましては、原則不要です。ただし、未支給年金の届出などは必要です。」とあります。死亡届そのものは原則不要でも、まだ受け取っていない年金(未支給年金)の手続きは別に必要です。死亡届が必要な人の場合は、10日以内(国民年金は14日以内)が期限です。
相模原市のように、予約制のおくやみ窓口で必要な手続きを洗い出してくれる自治体もあります。住んでいた市区町村のサイトで、おくやみの手続きの案内を探してみてください。
葬祭費・埋葬料は2年以内に申請する
葬儀が終わったあとに申請すると戻ってくるお金もあります。国民健康保険や後期高齢者医療に入っていた人なら、自治体から葬祭費が出ます。金額は自治体で違い、大阪市・名古屋市・横浜市などは5万円、東京都の世田谷区・練馬区は7万円です。会社員などで協会けんぽに入っていた人の場合は、その人に生計を維持されていた人が申請すると、埋葬料として5万円が出ます。どちらも申請しないと受け取れず、2年を過ぎると時効になります。
出典:大阪市・名古屋市・横浜市・世田谷区・練馬区の葬祭費の案内、協会けんぽ(2026年9月時点)
葬儀費用に亡くなった人の預貯金を充てたいときは、遺産分割の前でも相続人が1人で払い戻せる制度があります。払い戻せる額は口座ごとに、相続開始時の残高×3分の1×その相続人の法定相続分で計算し、1つの金融機関につき150万円が上限です(計算した額と150万円のどちらか少ないほう)。相続放棄を考えている場合は、払い戻す前に専門家に相談してください。
出典:法務省「相続法の改正」(2026年9月時点)
葬儀費用の目安や、葬祭費・埋葬料の申請のしかたは、家族葬の費用の記事で詳しくまとめています。
よくある質問
死亡届は喪主が自分で出さないといけませんか?
喪主と死亡届の届出人は別に考えます。届出人の順序は戸籍法第87条で決まっていて最初は同居の親族ですが、順序にかかわらず届け出ることもできます。窓口への提出は、静岡市の案内のように葬儀社が代行するとしている自治体もあります。引き受けるかどうかは依頼する葬儀社に確認してください。
亡くなった翌日に火葬することはできますか?
死亡後24時間を経過していれば、法律上は火葬できます。ただし実際の日程は火葬場の空きで決まるので、翌日に行えるとは限りません。地域や季節によっては数日以上待つこともあります。
家族葬と一日葬はどう違うのですか?
家族葬は参列者を家族や近い親族に絞る形式で、一日葬は通夜を行わず告別式だけで済ませる形式です。鎌倉新書の全国調査でも別の形式として集計されています。親族の考え方やお寺の意向もあるので、家族で相談して決めてください。
まとめ
喪主がやることは多く見えますが、法律で期限が決まっているものは限られています。最初の数日で守るべき期限は死亡届の7日以内だけで、診断書のコピーと火葬許可証の保管を押さえておけば、あとは葬儀社と相談しながら進められます。葬儀が終わってからは、世帯主の変更(14日以内)や葬祭費・埋葬料の申請(2年以内)が続きます。











