作業が終わったあとに請求額が跳ね上がった、大事にしていた品が見当たらない。遺品整理をめぐるトラブルは、精神的に消耗している時期に起きるだけに、その場で押し切られやすい。結論から書くと、起きやすいのは高額請求・無許可業者・品物の扱いの三種類で、いずれも契約前の確認と、当日その場で払わない姿勢で被害を小さくできる。ここでは公的機関が示している事例と対処法を整理する。
| トラブルの型 | 起きること | 先に打てる手 |
|---|---|---|
| 高額請求 | 作業後に見積もりと違う金額を請求される | 追加料金の条件を書面で確認 |
| 無許可業者 | 回収物が不法投棄されるおそれ | 許可業者一覧で社名を照合 |
| 品物の扱い | 残すはずの物が処分される・紛失する | 貴重品は事前に自分で確保 |
| 押し買い | 整理のついでに買取を強く勧められる | 訪問購入のルールを知っておく |
高額請求の相談は増えている
国民生活センターは2022年11月2日、不用品回収サービスのトラブルについて注意喚起を公表している。同センターによれば、全国の消費生活センター等への相談は2021年度に2,000件を超えた。相談件数は2018年度1,354件、2019年度1,457件、2020年度1,788件、2021年度2,231件と推移している。
紹介されている事例では、軽トラックパック7,000円、2トントラックパック2万5,000円という広告を見て申し込んだところ、積み込みが終わってから25万円だと言われた、というものがある。引っ越し当日で時間がなく、その場で支払ってしまったという流れだ。
遺品整理は明け渡しの期限や親族の予定が絡むため、この「時間がない」状況が起きやすい。だからこそ、契約の段階で追加料金の条件を書面にしておきたい。
無許可業者に頼むと何が起きるか
家庭から出た不用品を有料で運ぶには、市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が必要になる。横浜市は「無許可業者による不用品の処分は法律違反です。」としたうえで、無許可業者によって回収された不用品が不法投棄された事例が報告されていること、不適正処理でフロンガスや鉛などの有害物質が環境中に放出された例、不適正な保管による火災の例があることを挙げている。
国民生活センターも、無許可業者については一般廃棄物の処理が適正に行われているのか市区町村で確認ができず、回収された不用品が不法投棄される恐れなどもあるとしている。
確認方法は単純で、自分の市区町村が公開している一般廃棄物処理業の許可業者一覧に社名があるかを見ればよい。産業廃棄物収集運搬業の許可や古物商許可では代わりにならない。
国民生活センターは「作業中や作業終了後に、事前に聞いてない高額な料金を請求された場合は、後日納得した金額で支払う意思があることを示しつつ、その場での支払いを断りましょう。」と案内している。あわせて「もしも支払いを迫る作業員の態度等に身の危険を感じることがあれば、警察に連絡するのも一法です。」とも書かれている。相談先は消費者ホットライン188番。
品物がなくなったと感じたとき
「タンス預金が見当たらない」「あったはずの指輪がない」という相談は、遺品整理では起きやすい。ただし、業者が持ち出したのか、もともと故人が処分していたのか、別の親族が先に持ち出したのかは、あとからでは切り分けが難しい。
だから予防に寄せることになる。作業を依頼する前に、通帳・印鑑・現金・貴金属・権利証は自分で探して別の場所に移しておく。全部を事前に探せない場合は、貴重品が出てきたときの連絡方法を契約時に決めておく。作業前後の写真を残しておくのも有効だ。
実際に被害があると考えられる場合は、警察への相談が窓口になる。契約書、見積書、やり取りの記録は残しておきたい。
整理のついでの「買取」に注意する
遺品整理の現場で、そのまま買取を持ちかけられることがある。訪問して物品を買い取る取引は、特定商取引法の「訪問購入」に当たる場合がある。
消費者庁は不招請勧誘の禁止について「事業者は、訪問購入に係る売買契約の締結についての勧誘の要請をしていない者に対し、相手方の自宅等で売買契約の締結について勧誘をし、又は勧誘を受ける意思の有無を確認してはいけません。」と説明し、「いわゆる飛込み勧誘や、単に相手方から査定の依頼があった場合に、査定を超えて勧誘を行うことは、法に抵触することになります。」としている。
売ってしまったあとでも取り返せる余地がある。同庁は「法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、相手方は事業者に対して、書面又は電磁的記録により申込みの撤回や契約の解除(クーリング・オフ)をできます。」と案内している。さらに「売買契約の相手方は、クーリング・オフ期間内は債務不履行に陥ることなく、事業者に対して契約対象である物品の引渡しを拒むことができます。」とされており、迷ったらその場で渡さないという選択ができる。
親族との間で起きる行き違い
業者以外のトラブルもある。誰が何を残すかの認識がずれていると、あとから「勝手に捨てた」という話になりやすい。作業日を決める前に、残すものの候補を写真で共有しておくと防ぎやすい。
費用の分担も同じで、作業後に持ち出すと揉めやすい。金額の見込みが出た段階で共有しておきたい。相続放棄を検討している人が親族にいる場合は、その人が遺品に触れることの意味が変わるため、先に共有しておく必要がある。
よくある質問
作業後に高額な請求をされたらどうすればよいですか?
その場で支払わないのが基本になる。国民生活センターは、後日納得した金額で支払う意思があることを示しつつ、その場での支払いを断るよう案内している。身の危険を感じる場合は警察への連絡も一つの方法とされている。そのうえで消費者ホットライン188番から最寄りの消費生活センターに相談したい。見積書と請求書は保管しておく。
無許可の業者かどうかはどうやって調べますか?
市区町村が公開している一般廃棄物処理業の許可業者一覧で社名を確認する。産業廃棄物収集運搬業の許可番号や古物商許可番号がサイトに並んでいても、家庭の不用品を運ぶ根拠にはならない。許可の種類を見分けたい。
遺品整理業者に品物を盗まれた気がします。証明できますか?
後から証明するのは難しいのが実情だ。だからこそ、貴重品は作業前に自分で確保し、作業前後の写真を残す予防が中心になる。被害があると考えられる場合は警察に相談し、契約書・見積書・当日のやり取りの記録を提出できるようにしておきたい。

まとめ
遺品整理のトラブルは、高額請求・無許可業者・品物の扱い・押し買いの四つに整理できる。国民生活センターへの不用品回収サービスの相談は2021年度に2,231件と増加しており、時間に追われた状況で押し切られる形が典型になっている。
先に打てる手は、追加料金の条件を書面で確認すること、市区町村の許可業者一覧で社名を照合すること、貴重品を作業前に自分で確保すること。当日に想定外の請求をされたら、その場では払わない。買取を勧められた場合は、訪問購入のクーリング・オフが書面受領日から8日以内であることと、期間内は物品の引渡しを拒めることを覚えておきたい。













