出張買取で売ったあと、「思ったより安かった」「その場の勢いで手放してしまった」と後悔することがある。結論から書くと、出張買取は特定商取引法の「訪問購入」にあたり、原則として8日間のクーリング・オフができる。ただし政令で除外された品目と、除外される取引の形があり、そこに当たると1日も経たずに取り消せなくなる。除外品目には家具・家電・書籍が入っている。ここを知らずに「出張買取ならいつでも解約できる」と考えると、いちばん多く運ばれていく物がまさに対象外という事態になる。条文と政令をたどって整理する。
| 売った物 | クーリング・オフ | 根拠 |
|---|---|---|
| 貴金属・宝石・時計 | できる | 除外品目に入っていない |
| 衣類・着物・バッグ | できる | 除外品目に入っていない |
| バイク(二輪) | できる | 除外される「自動車」から二輪は外れる |
| 家具(たんす・ソファ・ベッド) | できない | 政令34条3号 |
| 大型家電(冷蔵庫・洗濯機等) | できない | 政令34条2号 |
| 書籍・CD・DVD | できない | 政令34条4号・6号 |
| 自動車(四輪)・有価証券 | できない | 政令34条1号・5号 |
出張買取は「訪問購入」として規制されている
2012年の改正で特定商取引法に第5章の2が加わり、事業者が消費者の自宅に来て物を買い取る取引が規制対象になった。消費者庁は訪問購入を「事業者が消費者の自宅等を訪問して、物品の購入を行う取引のこと。」と説明している。街頭でのチラシ、電話、飛び込みをきっかけに自宅で買い取ってもらう形は、業者の呼び方が「出張買取」でも「訪問査定」でも、この類型に入る。
クーリング・オフの中身は法第58条の14にある。消費者庁の解説はこう書いている。「訪問購入の際、売買契約の相手方が契約を申し込んだり、締結したりした場合でも、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、相手方は事業者に対して、書面又は電磁的記録により申込みの撤回や契約の解除(クーリング・オフ)をできます。」起算日は契約日ではなく書面を受け取った日である点に注意したい。書面をもらっていなければ、8日はまだ始まっていない。
クーリングオフの対象外になる品目は政令で決まっている
ここが最大の落とし穴になる。法第58条の4は、訪問購入の対象となる「物品」から政令で定めるものを除くとしており、その中身は特定商取引に関する法律施行令第34条にある。e-Govの条文では「法第五十八条の四の政令で定める物品は、次に掲げる物品とする。」として、自動車、「家庭用電気機械器具(携行が容易なものを除く。)」、家具、書籍、有価証券、「レコードプレーヤー用レコード及び磁気的方法又は光学的方法により音、影像又はプログラムを記録した物」の6つが並ぶ。この6分類に入る物は、そもそも訪問購入の規定が適用されない。だからクーリング・オフも書面交付義務もない。
抽象的な言葉なので、消費者庁は具体例を別添として公表している。家具の欄には「たんす、机、いす及び腰掛け、鏡台、ソファー、ベッド、マットレス、テーブル、レンジ台、テレビ台、棚、サイドボード、げた箱、衣類整理箱、金庫」が挙がっている。家庭用電気機械器具の欄には「ステレオ、電気ヒーター・ストーブ、電気こたつ、電子レンジ、衣類乾燥機(業務用は除く。)、電気冷蔵庫(冷凍庫と一体のものを含む。)、エアコン、電気洗濯機(業務用を除く。)」などが並ぶ。書籍は「事典、全集物、写真集、問題集、雑誌、単行本」である。
逆に言えば、貴金属、宝石、時計、着物、衣類、バッグ、カメラ、切手、骨とう品はこの6分類のどこにも入っていない。押し買いの被害が集中する品目がきちんと規制側に残されている。なお「自動車」については、施行令第14条が「自動車(二輪のものを除く。以下この条及び第三十四条第一号において同じ。)」と定義しているので、バイクや原付は除外されずクーリング・オフの対象になる。
品目が対象でも、取引の形で対象外になることがある
もうひとつの除外が法第58条の17第2項だ。消費者庁は、御用聞き取引、常連取引、そして「住居からの退去に際し、売買契約の相手方から取引を誘引した場合」を挙げ、これらは一部の規定を除いて特定商取引法が適用されないとしている。3つ目は施行令第37条第4号と施行規則第150条による定めで、規則は「令第三十七条第四号の主務省令で定める場合は、売買契約の相手方がその住居から退去することとしている場合とする。」と規定している。引っ越しを控えて自分から出張買取を呼んだケースは、これに当たるとクーリング・オフができない。
加えて、法第58条の17第2項第1号は「その住居において売買契約の申込みをし又は売買契約を締結することを請求した者に対して行う訪問購入」を除外している。ただし「請求した」の意味は厳しく解釈されている。通達は、「見積りをしてほしいので来訪されたい。」と伝えただけで「相手方が明確な取引意思を有しないまま、契約準備に当たる行為のために購入業者に自宅への来訪を求めた場合は、同号には該当しない」としている。査定を頼んだだけならクーリング・オフは残る。
期間中に使える権利は撤回だけではない
見落とされやすいのが引渡しの拒絶権だ。法第58条の15により、契約しても8日間は品物を渡さずに手元に置いておける。消費者庁も「売買契約の相手方は、クーリング・オフ期間内は債務不履行に陥ることなく、事業者に対して契約対象である物品の引渡しを拒むことができます。」と明記している。しかも業者側には告知義務があり、「クーリング・オフ期間内に売買契約の相手方から直接物品の引渡しを受ける時は、相手方に対して当該物品の引渡しを拒むことができる旨を告げなければなりません。」とされている。これを言わない業者は、その時点で法第58条の9に違反している。
費用面も法律で押さえられている。法第58条の14第4項は「申込みの撤回等があつた場合においては、購入業者は、その申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。」と定め、同条第6項は「前各項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。」としている。契約書に「クーリング・オフ不可」と書かれていても、対象取引ならその条項のほうが無効になる。
やり方と、揉めたときの備え
通知は書面または電磁的記録で行う。法第58条の14第2項は「申込みの撤回等は、当該申込みの撤回等に係る書面又は電磁的記録による通知を発した時に、その効力を生ずる。」と定めている。到達ではなく発信の時点で効力が生じるので、8日目に出した通知が9日目に届いても間に合う。消費者庁は、書面なら特定記録郵便・書留・内容証明郵便を、電磁的記録ならメールの送信控えやフォーム画面のスクリーンショットを残すことを勧めている。
すでに転売されていても諦めなくてよい。法第58条の14第3項は「申込者等である売買契約の相手方は、第一項の規定による売買契約の解除をもつて、第三者に対抗することができる。」と定めている(第三者が善意かつ無過失の場合を除く)。「もう売ってしまったので解除できない」という説明は、通達が「既に他の人に物品を転売してしまったので解除できない。」を不実告知の例として挙げているとおり、それ自体が違法行為になり得る。
録音については法律上の義務も禁止もない。ただ、書面の交付や引渡し拒絶権の説明があったかどうかは後から争点になる。契約書とその場の説明が食い違っているなら、書面をもらった日付と、渡された書類の枚数を控えておくだけでも意味がある。判断に迷うときは消費者ホットライン188に相談したい。
よくある質問
クーリングオフの8日はいつから数えますか?
契約日ではなく、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内である。消費者庁はこの起算日を明記しており、書面を受け取っていない場合は期間が進まない。妨害を受けて期間を過ぎたときは、あらためて交付された書面の受領日から8日となる。
家具や家電を売った場合もクーリングオフできますか?
できない。特定商取引に関する法律施行令第34条が、家具と、携行が容易なものを除く家庭用電気機械器具を訪問購入の対象から除いている。消費者庁の具体例にはたんす・ソファ・ベッド・冷蔵庫・洗濯機・エアコンなどが並ぶ。これらは書面交付義務も適用されないため、契約前に金額を確定させておく必要がある。
クーリングオフ期間中に品物を渡さなくても大丈夫ですか?
大丈夫である。法第58条の15により、引渡し期日の定めがあってもクーリング・オフ期間中は引渡しを拒める。業者には、その場で引渡しを受けるときに拒める旨を告げる義務もある。渡してしまうと加工や転売で取り戻しにくくなるため、迷っているなら手元に置いておくほうが安全である。

まとめ
出張買取のクーリング・オフは8日間で、起算日は書面を受け取った日である。ただし家具・大型家電・書籍・CD・DVD・自動車・有価証券は政令で対象から外れており、引っ越しに伴って自分から呼んだ場合も除外される。売る物と呼び方によって、使える権利がまったく違う。
対象になる品目なら、期間中は品物を渡さないという選択肢がいちばん強い。転売されてからでは戻らないことがある。渡す前に一晩置く。それだけで守れる範囲は大きく変わる。










