事務所を移転した、店舗を閉じた、在宅の仕事部屋を片付けた。その処分費用を経費に入れてよいのか、入れるならどの科目なのか。結論から書くと、判断の順番は「その支出が業務のためのものか」→「事業活動から出た廃棄物か家庭ごみか」→「科目をどう決めるか」になる。最初の2つには公的な基準があり、3つ目には決まりが見当たらない。
| 論点 | 拠りどころ |
|---|---|
| 経費になるか | 国税庁「No.2210 必要経費の知識」 |
| 家庭分との按分 | 同上(家事関連費の考え方) |
| 誰に頼めるか | 廃棄物処理法(事業者の責務・産廃許可) |
| 勘定科目 | 今回確認した範囲では定めが見当たらない |
不用品回収費用が経費になるかの考え方
個人事業の必要経費については、国税庁のタックスアンサーが基準を示している。同庁は必要経費に算入できる金額として、総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額と、「(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額」を挙げている。業務上の費用であることが出発点になる。
タイミングについても定めがある。同庁は「必要経費となる金額は、その年において債務の確定した金額(債務の確定によらない減価償却費などの費用もあります。)です。」としている。支払った年ではなく債務が確定した年、という考え方だ。
家庭分が混ざるときの扱い
自宅兼事務所の片付けのように、家庭の物と仕事の物が同じ回収に混ざる場合がある。国税庁は「家事上の費用は必要経費となりませんが、個人の業務においては一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用(家事関連費といいます。)となるものがあります。」としたうえで、「この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。」と説明している。
実務的には、見積書や作業明細で品目が分かれているほど区分しやすい。回収を依頼する段階で、事務所什器と私物を分けて記載してもらえるか聞いておくと、あとの処理が楽になる。
今回確認した範囲では、国税庁のタックスアンサー「No.2210 必要経費の知識」に、支出をどの勘定科目で処理するかを定めた記述は見当たらなかった。同ページが示しているのは必要経費に算入できる範囲と時期、家事関連費の区分の考え方であり、科目名ではない。科目の付け方に迷う場合は、顧問税理士や所轄の税務署に確認するのが確実だ。
事業から出たごみは家庭ごみとして出せない
税務と別に、廃棄物処理法の側にも押さえるべき線がある。同法第3条第1項は、事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならないと定めている。家庭ごみのルートには乗せられない、ということだ。
自治体も同じ整理をしている。横浜市は「市では収集できないごみ」の一つとして事業活動に伴って排出されるものを挙げ、「ご自分で処理施設に持ち込むか、廃棄物の処理をすることができる許可業者に依頼するなどして自己処理してください。(処理は有料)」としている。
依頼先の許可も変わる。事業活動から生じた産業廃棄物の収集運搬は、廃棄物処理法第14条第1項により都道府県知事の許可を受けた業者が行う。家庭の不用品なら市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可、事業所から出た産業廃棄物なら都道府県の産廃許可、という対応になる。
領収書と見積書は残しておく
経費として処理するなら、書類が要る。回収業者から受け取るべきは、金額の内訳が分かる見積書と、支払いを証明する領収書だ。宛名は事業の名義に合わせておく。国税庁が示す家事関連費の考え方では、取引の記録などに基づいて区分できることが条件になっているため、品目や作業内容が読み取れる書類のほうが安全側になる。
消費者庁の特定商取引法ガイドは、訪問販売の適用除外の一つとして「営業のため、又は営業として締結するもの」を挙げている。事業のために結んだ契約では、消費者としての保護が働かない場面がある。見積書と契約条件を事前に固める必要性は、個人で頼むとき以上に高い。
よくある質問
不用品回収の費用はどの勘定科目で処理しますか?
今回確認した範囲では、国税庁のタックスアンサー「No.2210 必要経費の知識」に、支出をどの勘定科目で処理するかを定めた記述は見当たらなかった。同ページが示しているのは、必要経費に算入できる範囲、算入時期、家事関連費の区分の考え方である。科目名の選択については、顧問税理士や所轄の税務署に確認してほしい。
自宅兼事務所の片付け費用は全額経費にできますか?
国税庁は、家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額に限られるとしている。全額かどうかではなく、区分できるかどうかが判断の軸になる。見積書で品目を分けてもらうと記録が残る。
事業所から出た不用品を家庭ごみとして出せますか?
出せない。廃棄物処理法は、事業者は事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならないと定めている。横浜市も、事業活動に伴って排出されるものは市では収集できないごみに分類し、自分で処理施設に持ち込むか許可業者に依頼して自己処理するよう案内している。

まとめ
不用品回収費用を経費にできるかは、業務上の費用かどうかと、家事関連費として区分できるかどうかで決まる。どちらも国税庁のタックスアンサーに基準が示されている。一方、勘定科目の名称については、今回確認した範囲で定めが見当たらなかった。
事業から出たごみは家庭ごみのルートに乗せられず、依頼先の許可も変わる。まずは見積書の段階で、事業分と家庭分、そして廃棄物の区分を分けて記載してもらうところから始めたい。










