使いかけの殺虫剤やヘアスプレーが棚の奥に残っている。捨てようと調べると「穴をあけてから出す」と「穴をあけずに出す」の両方が出てきて、どちらが正しいのか分からなくなる。結論から書くと、どちらも正しい。穴あけの要否は自治体ごとに正反対の運用がある。環境省の調査では、住民に穴あけを求める市区町村が57.4%、求めない市区町村が42.6%だった。共通しているのは「中身を出し切ること」と「作業は火気のない風通しの良い屋外で行うこと」の2点だけだ。
| 項目 | 全国共通 | 自治体で分かれる |
|---|---|---|
| 中身 | 必ず使い切る/出し切る | — |
| 作業場所 | 火気のない風通しの良い屋外 | — |
| 穴あけ | — | 必要(高砂市など)/不要(横浜市・足利市・東久留米市など) |
| 分別区分 | — | 資源ごみ/不燃ごみ/有害ごみなど |
穴あけの要否は市区町村でほぼ半々に割れている
環境省は平成31年3月時点の全市区町村を対象に、廃エアゾール製品の収集方法を調査している。回答があった1,570市区町村の集計結果として、同省の廃エアゾール製品及びカセットボンベの収集・処分に関する調査結果は、穴開け実施が897(57.4%)、穴開け不要が666(42.6%)、合計1,563市区町村と報告している。
収集区分も一様ではない。同調査によると、資源ごみとして回収する自治体が655(42.0%)で最も多く、不燃ごみが549(35.2%)、危険ごみ・有害ごみが249(16.0%)と続く。同報告は「住民による穴開けを依頼している市区町村は「不燃ごみ」として回収している割合が高く、穴開けを不要としている市区町村は「危険ごみ・有 害ごみ」として回収する割合が高い。」と分析している。
実際の案内を並べると違いがはっきりする。
| 自治体 | 穴あけ | 案内の内容 |
|---|---|---|
| 兵庫県高砂市 | 必要 | 使い切ったうえで穴あけをしてガスを抜く。市販の穴あけ器具の利用を推奨 |
| 横浜市 | 不要 | 中身を使い切って穴はあけない。プラスチックのキャップは分別 |
| 栃木県足利市 | 不要 | 2023年2月に「穴あけ不要」へルール変更。有害ごみで収集 |
| 東京都東久留米市 | 不要 | 穴を開けるのは事故の原因。使い切れない場合は袋に「中身あり」と表示 |
高砂市は「必ず中身を使い切ったうえで、「穴あけをして」ガスを抜いてから出してください。」とし、足で踏むタイプ・プッシュタイプなど市販の穴あけ器具まで紹介している。一方の東久留米市は「穴を開けるのは、事故の原因となりますので、やめてください。」と正反対のことを書いている。どちらかが間違っているのではなく、収集後の処理設備が違うためだ。
国の方針は「穴を開けない」方向に動いている
ただし流れははっきりしている。環境省は令和5年1月19日付の事務連絡で、都道府県・政令市に対し「住民が穴を開けず に充填物を出し切り廃エアゾール製品等を排出させ処理する体制の整備」を依頼してきたと述べ、改めて周知の徹底を求めている。
この事務連絡が出た直接のきっかけは事故だ。同文書は「本年 1 月 16 日、東京都港区において、エアゾール製品の内容物が屋内で噴 射され、これに引火したことが原因とみられる爆発火災事故が発生した。」と記し、平成30年12月には札幌市でも爆発火災事故が起きていることに触れている。足利市が穴あけ不要へルールを変更したのも、「令和5年1月に東京都内でスプレー缶のガス抜き作業中に爆発火災事故が起きたことを踏まえ、令和5年2月から、「穴あけは不要」という排出ルールに変わりました。」という経緯だった。
ガス抜きの手順と、絶対にやってはいけない場所
穴あけの要否にかかわらず、中身は出し切る必要がある。一般社団法人日本エアゾール協会は正しい捨て方を4ステップで示している。①製品を使い切って缶を空にする、②缶を振って音で確認する、③ガス抜きキャップでガスを抜く、④プラスチック部分を分別してごみに出す、という流れだ。②で『シャカシャカ』『チャプチャプ』という音がすれば中身が残っている。
日本エアゾール協会は「キッチンシンク中でのガス抜きキャップの使用は“絶対”に行わないでください!」と警告している。理由は「エアゾール製品に含まれている可燃性の液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(DME)は空気より重いためシンク内にたまり、火気の多いキッチンや屋内では思わぬ火種により引火する危険があります。」というものだ。
換気扇を回しても解決しない。ガスは下にたまる。作業は必ず屋外で、火の気のない風通しの良い場所で行う。
同協会はガス抜きキャップの使用条件として、「ガス抜きキャップは、風通しが良く、広く、火気の無い屋外で、風下に向かって、人にかからないように使用すること。」を挙げている。ティッシュや新聞紙に吹き付けて飛散を抑えるのも作法のうちだ。
なお、すべてのスプレー缶にガス抜きキャップが付いているわけではない。同協会によれば、圧縮ガスのみを使用している製品、不燃性液化ガスのみの製品、泡状やゲル状の製品、内容量100g以下の製品などは装着の対象外とされている。缶にキャップが見当たらない場合は、この適用除外に当たる可能性がある。
どうしても中身が出せないときは自治体とメーカーに聞く
噴射ボタンが壊れて中身が出せない、という状況はよくある。日本エアゾール協会は、中身を排出できないことに関する問い合わせは受け付けておらず、商品に記載されたお客様相談室や販売元に直接聞くよう案内している。横浜市も、中身がどうしても出し切れない場合は各区の資源循環局事務所に相談するよう求めている。東久留米市のように、袋に「中身あり」と表示して出すよう指示している自治体もある。
放置がいちばん危険だ。東京消防庁の集計では、令和6年のごみ収集車の火災33件のうちエアゾール缶等が発火源となったものが8件を占めている。同庁は「スプレー缶をやむを得ず使い切らずに捨てる時には、火気のない通気性の良い屋外で残存ガスがなくなるまで噴射してから廃棄しましょう。」としている。
よくある質問
スプレー缶に穴を開けるのは危険ではないのですか?
中身が残ったまま穴を開けるのは危険だ。日本エアゾール協会は、中身が残っている容器に不用意に穴をあけると火災や破裂事故につながることがあるとしている。穴あけを求めている自治体も、順序としては「使い切る→ガスを抜く→穴を開ける」であって、いきなり穴を開けろとは言っていない。そして環境省は住民が穴を開けずに済む体制の整備を自治体に求めている。自分の市のルールに従いつつ、迷ったら穴を開けずに自治体へ相談するのが安全側だ。
ライターやマニキュアも同じ出し方でいいですか?
同じではない。ライターは使い切ってガスを抜く点は似ているが、区分を分けている自治体が多い。マニキュアは中身が液体で、瓶が割れると危険なため別扱いになることがある。また、エアゾール式の簡易消火具はスプレー缶とは別物で、横浜市は破裂事故を理由に、該当製品はスプレー缶として出さず製造業者に問い合わせるよう案内している。
カセットボンベもスプレー缶と同じ扱いですか?
収集上はまとめて扱う自治体が多いが、問い合わせ先は違う。日本エアゾール協会は、カセットボンベに関する問い合わせは一般社団法人日本ガス石油機器工業会(0120-14-9996)へ連絡するよう案内している。使い切り方も、カセットこんろに取り付けて使い切る方法が推奨されている。

まとめ
スプレー缶の穴あけは、自治体で運用が真っ二つに分かれる。環境省の調査では穴開け実施が57.4%、不要が42.6%だった。高砂市は穴あけを求め、横浜市・足利市・東久留米市は穴を開けないよう求めている。まず自分の市のルールを確認してほしい。
どのルールでも共通なのは、中身を出し切ること、そして作業を火気のない風通しの良い屋外で行うことだ。台所のシンクは最も危険な場所で、可燃性ガスは空気より重いためシンク内にたまる。ここだけは全国どこでも同じだ。








