退去前にどこまで掃除すべきか——基準は国土交通省のガイドラインにある。求められているのは「通常の清掃」であって、専門業者レベルの仕上がりではない。具体的にはゴミ撤去・掃き掃除・拭き掃除・水回り清掃・換気扇やレンジ回りの油汚れ除去の5項目。この記事では、やるべきことと、やらなくていいことを整理する。
※本記事は国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」に基づく一般的な整理です。個別の契約は契約書の内容によります。
| やること | やらなくていいこと |
|---|---|
| ゴミの撤去 | フローリングのワックスがけ |
| 掃き掃除・拭き掃除 | 家具のへこみ跡の補修 |
| 水回りの清掃 | 壁の画鋲穴の補修 |
| 換気扇・レンジ回りの油汚れ除去 | 日照によるクロスの変色 |
基準は「通常の清掃」
国土交通省のガイドラインは、クリーニング費用の負担について次のように定めている。
「クリーニングについて、経過年数は考慮しない。賃借人負担となるのは、通常の清掃を実施していない場合で、部位もしくは住戸全体の清掃費用相当分を全額賃借人負担とする。」
裏を返せば、通常の清掃をしていれば、専門業者による全体クリーニングは賃貸人(大家)の負担になる。ガイドラインの別表1でも、賃貸人負担の例として「専門業者による全体のハウスクリーニング」が挙げられている。
その「通常の清掃」の中身が、別表2に列挙されているゴミ撤去・掃き掃除・拭き掃除・水回り清掃・換気扇やレンジ回りの油汚れの除去だ。
特に押さえたいのは換気扇と水回り
5項目のうち、放置すると賃借人負担になりやすいのがこの2つになる。
ガイドラインの別表では、賃借人負担の例としてガスコンロ置き場・換気扇等の油汚れ、すすが挙げられ、使用期間中の清掃・手入れを怠った結果とされている。
つまり「掃除しなかったから汚れた」と判断される汚れは、借主の負担になりうる。逆に、日常的に手入れしていれば通常損耗として扱われる。
実際の落とし方については、メーカーの案内が参考になる。たとえばレンジフードのファンや五徳の油汚れは、つけ置きで浮かせるのが基本になる。
やらなくていいこと
ガイドラインで賃貸人負担とされているものは、借主が直す必要はない。別表1に挙げられている例を見る。
- 「フローリングのワックスがけ」
- 「家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡」
- テレビ・冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)
- 「壁に貼ったポスターや絵画の跡」
- 壁等の画鋲・ピン等の穴(下地ボードの張替えが不要な程度のもの)
- 「クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)」
- 畳の裏返し・表替え(特に破損していないが、次の入居者確保のために行うもの)
ワックスがけをして帰る必要はない——これは意外に知られていない。むしろ床材によってはワックスが推奨されていない場合もある。
ガイドラインは原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」と定義しています。
そして「原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すものではないということを明確にし」とも。新品同様に戻す義務はないというのが出発点です。
掃除より大事なのは「記録」
ガイドラインはトラブル防止のために、写真などの記録を推奨している。
方法も具体的だ。「具体的な損耗の箇所や程度といった物件の状況を平面図に記入したり、写真を撮るなどのビジュアルな手段を併せて活用することも重要である。」
そして「なお、こうしたチェックリストなどは、後日トラブルとなり、訴訟等に発展した場合でも証拠資料になりうるため、迅速な解決のためにも有効であると考えられる。」とされている。
掃除した状態を写真に残す——これが「通常の清掃を実施した」ことの根拠になる。退去立会いの前に、各部屋・水回り・換気扇を撮っておきたい。
自分で無理なら業者を入れる選択も
汚れが落ちない、時間がない、という場合は自分でクリーニングを頼む方法もある。ただし契約にクリーニング特約がある場合、二重払いになる可能性がある。
先に契約書を確認し、特約の有無と金額を把握してから判断したい。特約がある場合、自分で業者を入れても特約分が免除されるとは限らない。
部分的に頼む場合の相場は、くらしのマーケットで「キッチンクリーニングの相場 1箇所 ¥10,000〜¥16,000」、「お風呂(浴室)クリーニングの相場 1箇所 ¥11,000〜¥16,000」となっている。

落ちない汚れがあること自体は、必ずしも借主の責任にはならない。判断の分かれ目は「通常の使用を超えているか」「手入れを怠った結果か」だ。
たとえば浴室のカビは、換気していても発生する。日常的に掃除していたのなら通常損耗の範囲と考えられる。一方、何年も放置してこびりついた状態なら、手入れを怠った結果と見られる可能性がある。
実際、プロでも落とせない汚れはある。壁紙のヤニについて、東リは「普通の壁紙では、どんな薬剤や洗剤をつかっても取り除くことができませんでした」としている。
落ちない汚れを無理にこすって傷をつけるほうが不利になる。落とせる範囲を掃除し、写真を残して立会いに臨むのが現実的な対応になる。
よくある質問
賃貸の退去時、掃除はどこまでやればいいですか?
「通常の清掃」までです。国土交通省のガイドラインの別表2では、その中身としてゴミ撤去・掃き掃除・拭き掃除・水回り清掃・換気扇やレンジ回りの油汚れの除去が列挙されています。専門業者レベルの仕上がりは求められていません。ガイドラインは「原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すものではない」とも明記しています。
退去前にワックスがけをすべきですか?
不要です。ガイドラインの別表1では、賃貸人(大家)の負担となるものの例として「フローリングのワックスがけ」が挙げられています。同様に「家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡」「壁に貼ったポスターや絵画の跡」「クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)」も貸主負担とされています。
掃除した証拠は残すべきですか?
残してください。ガイドラインは「具体的な損耗の箇所や程度といった物件の状況を平面図に記入したり、写真を撮るなどのビジュアルな手段を併せて活用することも重要である。」とし、「こうしたチェックリストなどは、後日トラブルとなり、訴訟等に発展した場合でも証拠資料になりうる」としています。退去立会い前に各部屋・水回り・換気扇を撮影しておくと、「通常の清掃を実施した」根拠になります。
まとめ
- 求められるのは「通常の清掃」——業者レベルではない
- 5項目=ゴミ撤去・掃き掃除・拭き掃除・水回り清掃・換気扇の油汚れ除去
- 特に換気扇とレンジ回りは放置すると借主負担になりやすい
- ワックスがけ・家具の跡・画鋲の穴・日照による変色は貸主負担
- 「借りた当時の状態に戻すものではない」
- 掃除より重要なのが写真の記録——証拠資料になる
- 特約がある場合、自分で業者を入れても免除とは限らない
- 落ちない汚れを無理にこすって傷をつけない










