退去時のハウスクリーニング代は誰が払う?|国交省ガイドラインの原則と特約の3要件

ハウスクリーニング 誰が払う

退去のときに請求されるクリーニング代。国土交通省のガイドラインでは、「専門業者による全体のハウスクリーニング」は賃貸人(大家)の負担とされている。ただし特約があれば話は変わる。そして特約が有効とされるには3つの要件を満たす必要がある。この記事では原則と例外を、ガイドラインの原文で確認する。

※本記事は国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」に基づく一般的な整理です。個別の契約については、契約書の内容とお住まいの自治体の消費生活センター等にご相談ください。

ケースガイドライン上の負担
全体のハウスクリーニング賃貸人(大家)
通常の清掃をしていない場合賃借人(借主)が全額
経年変化・通常損耗賃貸人
故意・過失・善管注意義務違反賃借人
有効な特約がある場合特約の内容による

原則:全体のハウスクリーニングは大家の負担

ガイドラインの別表1では、賃貸人が負担するものの例として「専門業者による全体のハウスクリーニング」が挙げられている(賃借人が通常の清掃を実施している場合)。

その考え方は明快だ。ガイドラインは原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」と定義している。

そして重要なのがこの一文になる。「原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すものではないということを明確にし」

入居時と同じ状態に戻す義務はない——ここが出発点だ。

費用負担の一般原則も明示されている。「建物・設備等の自然的な劣化・損耗等(経年変化)及び賃借人の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗)については、賃貸人が負担すべき費用となる」

例外:通常の清掃をしていない場合

ただし、まったく掃除をしていなければ話が変わる。ガイドラインは次のように定めている。

ポイントは2つある。①経過年数が考慮されない(=住んだ年数で割り引かれない)②全額負担になる

では「通常の清掃」とは何か。ガイドラインの別表2では、賃借人が行う通常の清掃としてゴミ撤去・掃き掃除・拭き掃除・水回り清掃・換気扇やレンジ回りの油汚れの除去が列挙されている。

ゴミを出す・掃く・拭く・水回りを洗う・換気扇の油を落とす——この5つが借主に求められる範囲になる。専門業者レベルの仕上がりは求められていない。

賃借人の負担になる汚れ

ガイドラインの別表では、賃借人負担の例として次が挙がっている。

  • ガスコンロ置き場、換気扇等の油汚れ・すす——使用期間中の清掃・手入れを怠った結果とされる
  • 日常の不適切な手入れ、もしくは用法違反による設備の毀損
  • 「落書き等の故意による毀損」

逆に、賃貸人負担とされているものには次がある。

ワックスがけと家具の跡は大家の負担——これは知らないと請求を受け入れてしまいやすい部分になる。

特約があれば変わる。ただし3要件

実務では「退去時にハウスクリーニング費用を借主が負担する」という特約が多い。ガイドラインは特約について、まず可能であることを認めている。

「賃貸借契約については、強行法規に反しないものであれば、特約を設けることは契約自由の原則から認められるものであり、一般的な原状回復義務を超えた一定の修繕等の義務を賃借人に負わせることも可能である。」

そのうえで要件を示している。

ガイドラインは、これらの要件を満たしていなければ効力を争われることに十分留意すべきとしている。

最高裁の判断も引用されている。「賃借人に同義務が認められるためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗及び経年変化の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の通常損耗補修特約が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である」

「契約書に具体的に明記」または「明確な合意」——曖昧な記載では足りないという判断になる。

金額の合理性についても言及がある。「また、客観性や必要性については、例えば家賃を周辺相場に比較して明らかに安価に設定する代わりに、こうした義務を賃借人に課すような場合等が考えられるが、限定的なものと解すべきである。」

ガイドラインには法的拘束力がない

ここは正確に理解しておきたい。ガイドライン自身が次のように述べている。

「本ガイドラインについては、賃貸住宅標準契約書(平成 5 年 1 月 29 日住宅宅地審議会答申)と同様、その使用を強制するものではなく、原状回復の内容、方法等については、最終的には契約 内容、物件の使用の状況等によって、個別に判断、決定されるべきものであると考えられる。」

また同ガイドラインは、これが負担割合等についての一般的な基準であり、法的な拘束力を持つものではないとも明記している。

「ガイドラインにこう書いてあるから払わない」とは言えない。ただし、話し合いや紛争解決の場面で参照される一般的な基準として、極めて有力な材料になる。

契約書にクリーニング特約があります

まず契約書の記載を正確に読むことから始めたい。特約の3要件に照らして、次を確認する。

  1. 金額または算定方法が具体的に書かれているか——「実費」「相当額」だけでは範囲が不明確
  2. 説明を受けた記憶があるか——要件②「認識していること」に関わる
  3. 署名・押印しているか——要件③「意思表示」に関わる

ガイドラインは「したがって、仮に原状回復についての特約を設ける場合は、その旨を明確に契約書面に定めた上で、賃借人の十分な認識と了解をもって契約することが必要である。」としている。

金額に納得できない場合は、内訳の提示を求めるのが第一歩になる。ガイドラインも入退去時の確認について「具体的な損耗の箇所や程度といった物件の状況を平面図に記入したり、写真を撮るなどのビジュアルな手段を併せて活用することも重要である。」としている。

それでも折り合わない場合は、消費生活センターや、少額訴訟・調停といった制度がある。ガイドラインの第2章でも「トラブルの迅速な解決にかかる制度」として整理されている。

よくある質問

退去時のハウスクリーニング代は借主が払うのですか?

原則は貸主負担です。国土交通省のガイドラインでは、賃貸人が負担するものの例として「専門業者による全体のハウスクリーニング」が挙げられています。ただし「賃借人負担となるのは、通常の清掃を実施していない場合で、部位もしくは住戸全体の清掃費用相当分を全額賃借人負担とする。」とされ、掃除をしていない場合は借主が全額負担になります。また有効な特約がある場合はその内容によります

「通常の清掃」とはどこまでやればいいのですか?

ガイドラインの別表2では、賃借人が行う通常の清掃としてゴミ撤去・掃き掃除・拭き掃除・水回り清掃・換気扇やレンジ回りの油汚れの除去が列挙されています。専門業者レベルの仕上がりは求められていません。またガイドラインは「原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すものではない」とも明記しています。

クリーニング特約は必ず有効ですか?

3つの要件を満たす必要があります。ガイドラインは「① 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること ② 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること ③ 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること」を挙げ、これらを満たさなければ「効力を争われることに十分留意すべき」としています。ただしガイドライン自体には「法的な拘束力を持つものでもない」ため、最終的には契約内容と個別事情によります。

まとめ

✅ この記事のポイント
  • 原則、全体のハウスクリーニングは賃貸人負担
  • 「原状回復は借りた当時の状態に戻すものではない」
  • 通常の清掃をしていない場合は借主が全額負担(経過年数の考慮なし)
  • 通常の清掃=ゴミ撤去・掃き掃除・拭き掃除・水回り清掃・換気扇の油汚れ除去
  • ワックスがけ・家具の跡・電気ヤケ・画鋲の穴は貸主負担
  • 特約は可能だが3要件を満たす必要がある
  • 最高裁は契約書への具体的明記か明確な合意を求めている
  • ガイドラインに法的拘束力はない——一般的基準として使う

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